「名前も教えてくれねえ奴が仲間にでもなると思うか?俺らが決めつけたところで入るとは思わない」


仮に入った場合に新撰組内に与える危害も考えていないわけではない。


もし隊士を意味もなく斬りつけたり、屯所内で暴れられた時に、入隊させるべきじゃなかった。では遅いのだ。


だがそれ以前に少女が自らの意思で入隊するとも思えなかった。


彼女の表面だけを考え首を横に振った土方に対し、沖田にはもっと違った考えがあった。


それは一昨日の夜の事だった。


「戦ってない土方さんだからわからないんです。あの子には言葉通り、人を殺すことに存在価値があるのかもしれません」


刀を交えたことを思い出して沖田はわかった。


少女が刀を握ったことがあるのは今回だけではないこと。おそらく、何年にも渡り何十、何百、それ以上の沢山の人を殺している。


二十歳にも満たない少女があれほど恐ろしい速さで刀を捌く力を身につけているというのだから、その背景にある血の数は計り知れるものではない。


それに、沖田はあの少女と言葉を交わしたかった。


あの夜に何か言葉を交える事が出来たというわけではないが、刀を交えれば…少しでも少女を分かることが出来る気がした。