幕末の雪

立ち上がろうと膝を立てた山崎の袴の裾を、少女は真っ白な手でちょんと掴んだ。


落ち着いたといえ病人に変わりない少女にはまだ完全に力が戻っていない。


弱々しく力を込められた手は今にも袴からスルリと落ちそうだ。


「私はまだ寝ていると言え」


「……それはできない」


「月が登り切るまででいい。その間だけ……頼む」


殺気のない少女に悪意は感じられず、断ることができなかった。


仕方なく…と山崎は頷いてまた腰を下ろした。


もう少し、あと少しでいいからゆっくりと眠りながら時を過ごしたかったのだ。


きっと土方達が来れば質問責めにされるか、うるさくされるに違いない。


どっちにしても安心できないのは確かだ。