幕末の雪

「……何故私は生きている」


彼女との間に生まれると思われた沈黙だったが、意外にも口を開いたのは少女の方だった。


「蔵の中で倒れている君を見つけて治療したんだ」


その凛とした声に少女を真っ直ぐに見られない。


年下に対しこのようにして頬が赤くなるというのは……という照れのような感覚。


きっと無自覚なのだが、山崎は顔をそらした。


「何故治した」


「……理由なんているのか?」


言葉や顔には出さないものの、少女は少しだけ驚いていた。


山崎の言葉を理解できたわけじゃない。むしろ理解できないからこそ、不思議すぎた。


見ず知らずの人間を治療することに「理由がいるのか」と言ったのだ。


変わった奴だ…と思った。


「副長を呼んでくる。できれば、逃げないで欲しいのだが……」


逃げられないのは山崎よりも少女がよく知っている。


足の痛みは想像以上のものだ。