幕末の雪

それ故、こぼれた言葉は無意識に近いのだろう。


数秒遅れで言葉を意識した時、頬は赤まり咄嗟に口元を覆った。


(何言ってるんだ、俺は……)


周りに人がいないか首を振る。


障子に人影は映っておらず、近くに人の気配もない。


山崎は胸を撫で下ろした後再び少女へと目を移した。


最初は熱や縄の痕が付いた首ばかりを気にしていたが、布団をめくった時にそれを見て言葉を失った。


内出血した足首には火傷痕があり、首以上にくっきりと縄の痕が付いていた。


「辛かっただろうな。だが……これからどうなるかは、俺もわからない」


独り言のように零した言葉に、少女はパチリと目を開いた。


「……お、起きたのか」


「……」


視線だけを一度山崎に移すと、またその視線を天井に戻した。


一瞬ではあったが少女と目を合わせるのは初めてで、不覚ながらもその可愛らしさにドキリと胸がなった。


漆黒だというその瞳も、行燈の灯りに反射し淡く橙色に輝いていた。