幕末の雪

「あの、沖田さん…」


山崎が声をかけると、沖田はピタリと動きを止めた。


そして固まるように少女を見つめたまま山崎に言う。


「……この子、死んだりしないよね?」


妙に落ち着いた声で、山崎は焦ったように少女を見て状態を確かめた。


数秒後不安はありながらも深く頷いた山崎に、沖田はその場を退いた。


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少女の熱が落ち着いたのは丁度、幹部隊士達が夕餉を終えた頃だった。


熱心な山崎の看病により、病状にしては早くに治ったのだ。


山崎は立ち上がると行燈に灯りをつける。


時折苦しそうに呻くこともあったが、今ではすっかりと白い肌も色を取り戻しており、心地よさそうな寝息が聞こえた。


人を前にしてはあんなに冷酷そうに振る舞うものの、寝顔を見ればただの幼い女子にすぎない。


そんな少女の寝顔を見て、山崎はそっと微笑んだ。


「ほんま綺麗やな……。何で…人殺すんやろな…」


関東出身の新撰組に合わせ、入隊当初に関西弁を直した山崎はめったに人前で関西弁を喋らない。