幕末の雪

一行が部屋に着いた時最初に見えたのは、座り込み布団の中の人物を見つめる沖田の背中だった。


普段からは有るまじき行為だな…と思った。


まず、少女どころか女と関わることを毛嫌いする沖田だし、人の死に執着はあまりない。


しかも死にかけている人の横に寄り添うなど、かなり親しい人にしかしないはずだ。


「総司、水と手拭い!」


部屋の前に集る男達を掻き分け、藤堂は水の入った桶と手拭いを持って沖田の元へ寄った。


「ありがと」


「おう」


それを受け取ると、沖田は素早く手拭いを絞って少女の汗を拭い始めた。


藤堂も再び食材の準備に急いで台所へとかけて行った。


「……」


一生懸命に手を動かす沖田の不器用な姿を見て、土方はため息を吐いた。


「山崎、代わってやれ」


「はい」


しかし沖田は代わろうとしない。