土方は知るはずもない。


少女の過去のある一時から、一度も人とまともに話していないのを。


そして唯一の話した相手が、少女に人殺しの念を押し付けた人間だということを……。


だがそれでも少なからず、その少女の心は胸にチクりとくる何かを感じた。


悔しいが土方の言う通りだった。


……分かってもらえないのではなく、分かるわけがないと決めつけて自分を塞ぎ込んでいた。


ただそれを出会ったばかりの土方に言い当てられた事が、また許せない。


それにやはり、自分と同じ境遇にない人間が自分の全てを同じ気持ちで理解するなど無理だと……そう押し通したかった。


「黙れ。殺せばいいだろ!」


「うるせえ!」


土方がそう怒鳴ると、少女は黙り込んでうつむいた。


肩が縮こまっている。


まさか…今ので驚いたのだろうか?


それから少女は喋らなくなった。


土方は一度頭を冷やさせるとイラつきながら、強引に少女を引きずり蔵へと押し込んだ。


その時の少女は、まるで人形のように魂が抜けていた。


「しばらくそこにいろ!」


ギイィ…バタン


ガチャッ


鍵が締められ、周りの音が聞こえなくなった時、少女は一人になったんだと安心しパタリと倒れこんだ。


『うるさい!黙ってなさい!』


土方の声と重なるように思い出された、遠い過去のある人物の自分に向けられた叱る声。


(あの、怒り方…懐かしい……)


「お父さん……足、痛いよ…」


あの時から張り詰めていた気が何故か解け、涙が流れた。


ギュッと締め付けられた足元が、血が出るのではないかというほど痛んだ。


そして少女の涙が止まった時、また瞳からは光が失われた。