幕末の雪

何と無く想像はしていたものの、いざそうなると部屋の中の沈黙が息苦しい。


新撰組の局長が気を遣ってまで聞いたのに対し、少女はまるで聞こえてすらないかのよう。


数人の額に筋が浮かんだものの、近藤は両手でまあまあと抑えた。


少女もこれまで人を殺してきた神経の持ち主のため、そう簡単に吐くこともないだろう。


とは言うものの、近藤も困ったような表情で山南へと助けを求める。


しかし、山南も出会ったばかりで素性も全く知らない少女が相手となるとお手上げだ。


首を傾げて苦笑いするしかない。


どうしたら良いものか……沈黙の中、時がただ過ぎる。


部屋の外では鳥が囀(さえず)るのに、部屋の中ではそれすら聞こえないほど堅い空気だった。


誰も話を切り出そうとはしない。否、話し出すきっかけが生まれないため、誰も何も言えない。


沈黙に痺(しび)れを切らした土方が一度舌打ちをした後、口を開いた時だった。


「どうせ殺すんだろう……。それなら何故名前を聞く」