幕末の雪

その計らいか、幹部隊士は一人も帯刀しておらず、目に付く物で武器になる物は部屋の中には一つもない。


よく見れば、手こそ自由だが少女の足首は両足を揃えて縄できつく縛られている。


非力な少女に心配はないが、あの迅速な動きで逃げられてはまた捕まえるのは困難だ。


それにしてもこの年の少女に対しては、きつく縛り付けすぎじゃないのか。


藤堂は痛々しい顔でその足を見つめた。


部屋の中には、近藤と土方、山南、昨日の三人に加え永倉と原田がいる。


そして天井からは監察方の山崎が、密かにその様子を監視していた。


計八、九人の見知らぬ男に囲まれているにもかかわらず、少女は全く表情を変えない。


「ではまず、名前を聞かせてもらえないか」


近藤は気遣いながら言う。


だが少女は一言も発しない。近藤の方を見ることがなければ、嫌そうなそぶりもない。