光の宿らないその瞳を見た時に沖田が感じたのは、藤堂と同じく恐怖だった。


そして真っ暗闇の奥に隠された悲しみに染まる何かーーー。


あれだけ自分が囮役になれないことを引きずり拗ねていた沖田はどこへ行ったのか。


完全に戦意喪失した沖田は刀を鞘におさめた。


「何故刀をしまう」


凛とした声は、静かな闇夜に響き渡り、再び雲に隠れた月の光と共に消えていった。


その声を聞いた沖田を含めた三人は、とても悲しく辛い気持ちになった。


人を殺していい人ではない。


汚れてはいけない人物が既に汚れてしまったのだーーー。と胸が苦しくなった。


沖田は手荒ながらも、少女が油断した一瞬に手刀をくらわし気絶させた。


倒れこむ少女を抱きとめ肩に担いで、二人の元へ近寄る。


「連れて帰ろう…」


何故このような少女が人斬りとなったのかーーー。


凛とした声に合わぬ漆黒の瞳の奥に隠されたものは一体なんなのかーーー。


まだ知らぬことばかりの少女なのに、既に他人ではないような気がしていた。


もう此の手は離せないと、彼らは思った。