盛り上がりかけた空気が一気に冷めて行くのを誰もが感じた。


原田の言葉が再び沈黙をもたらし、それに運がいいのか悪いのか沖田が戻ってきた。


「言いたいことはちゃんと言いまし……どうかしたんですか?」


いつも通りの笑顔の沖田は、あまりの反応のなさに不思議そうに首を傾げた。


右手には包帯が巻かれており、気になったのか後ろには山崎もいた。


きっと戻ってくる頃には少しは明るさを取り戻しているであろうと思っていたが、それどころか何も変わっていない気がする。


沖田は何と無くだが視線が集まっていた原田に視線を移した。


ただ一人、まだ陽を信じようとしていないのが伝わる表情の原田を見れば沖田からも大方予想はつく。


(僕から言っても譲らないんだろうな…)


「悪いが総司、俺はお前ほどお人好しじゃないんだ…。今はまだ無理だ」


沖田ほどお人好しじゃないと言いつつ、原田は誰からも認められるほどの優しい心を持っている。


しかしながら否定するような言葉と、その優しさを向ける例外に陽がいるかのような態度に、男達は複雑な思いだった。


原田は心の中で葛藤しているかのような表情を見せた後、背を向けて部屋から離れていく。


「おい左之さん!」


藤堂が呼んでも原田が振り返ることはなかった。


原田のいなくなった場所を見つめる陽に、藤堂は必死に訴える。


「違うんだ!左之さんだって本当は陽のこと認めようとしてんだよ…!ただ今はちょっと…」


藤堂が言いたいことは陽にもわかる。


だが藤堂の心配がいらぬほどに、陽は冷静だった。


今ここにいる男達に、信じられようとしていることがわかったからこそだった。


きっと大丈夫。


そう思うほど、陽は少しずつではあるが新撰組を信じ始めようとしていた。