幕末の雪

もどかしく彷徨う陽の手は刀を求めていた。


今まで何を感じるよりも先に、人というのをまるで物かのように斬ってきた。


ここまで自身を迷わせ複雑に思わせる出来事に直面したことはなく、解決法もわからない。


苦しみから解放されるために、今でさえ目の前の沖田をどうにかしてしまおうと刀を求めているのに。


(私は、こいつも殺せないというのか…?)


沖田の言葉が正しいなら、例え今刀を手にできても、沖田に致命傷は負わせないことになる。


陽が仲間を信じたいと思っている、そうなるわけだ。


あり得ないと陽は首を振った。


“仲間なんて求めてない”


「信じる前からこうなるような奴らの何を信じろって言うんだ!」


「……!」


普段声を荒げない陽が、頭が振れる程に力んで大声を出す。


それを聞いた沖田の目の前にいるのは、何時もの陽ではなかった。


瞳を俯かせ、下唇を噛み締めて何かを堪えているようだ。


陽の心が急に乱れたことを感じ、沖田は状況を判断できないでいた。


だが、冷静な陽がそうなったということはそれだけ本気なのだろうと思う。


言葉から伺えた。


陽は新撰組を信じたかった。それを邪魔するのが三日前の自身らなのだと。


そして昨日、藤堂を斬りつけたのも、新撰組での居場所を失う焦りが原因ではないかと考えられる。


そうすれば、藤堂に致命傷を負わさなかったのも、殺意が原因で無かったと説明がつく。