幕末の雪

今、陽は何を思い何を見ているのか。そして、望むものは何なのか。


そう。もし敵だと思うなら、とうの昔に殺しているんだ、お互い。


沖田がそう思ったのと同時に思い出したのは、出会ったばかりの時の陽の姿だった。


雲間から覗く月の光の下、辺りとともに照らされる白い肌を見て感じたのは心苦しさ。


闇夜に溶け込むようで、その空よりもずっと黒い瞳を見て思ったのは悲しい陽の過去。


透き通る鈴のような声を聞き、月光とともに消えゆくのを追った。


この声があるべきその生活を取り戻させたいと。


(結局、また人を殺させるわけだけど……)


沖田は小さく笑い、口を開く。


「おこがましいかな」


そして、一度は戻した手をゆっくりと陽の頭上にかざして下ろした。


「もう一度だけ、信じてほしい」


「都合のいい事を言うな。だいたい、一度だって信じた覚えはない。お前たちなんか信用できるわけないだろ」


陽はその手を払った。


これぐらい予想できた。だが、ここで手を引くわけにはいかなかった。


「それなら今から信じて」


強引にも言ったのは沖田らしくなく、だが瞳はこれまでなく真剣だった。


真っ直ぐに見つめる視線から逃れようと目を逸らすと、両肩を沖田に捕らえられた。


「だから信じるわけ……」


「昨日も言っただろ。信じたいから平助を殺さなかった。違うの?」


「違う、私は……もう離せっ」