「あの時、朝早くからありがとう。あまりに美味しくないから食べられなかったけど、気持ちは嬉しかったよ」
あまりに美味しくないと、最もらしい答えを気を遣いもせずに沖田が言うせいで、その後の気持ちは嬉しかった。という言葉だけは信用してしまう。
情けのようながら、陽へとしっかりと向けられた優しげな笑顔を見て、陽は耐え切れず口を開いた。
「どうしてだ……。私の事を、突き放したり優しくしたり…。私をからかいたいだけなら、今すぐ解放してくれ」
陽の頭に浮かぶのは、陽を気にかける山崎、斎藤、山南の姿や、機嫌の悪い原田の姿。
視線で気にかけてくる永倉や、自分の背を見上げる藤堂、涙を流し抱きしめてくる近藤、甘味処へと連れる沖田の後ろ姿だった。
だが、決まって最後に思い出されるのは、激しく自分を叱咤する土方の姿だった。
照れた顔をして陽のために購入してくれた着物を見せる姿を塗りつぶすかのように、無理に炊事を押し付けられた事ばかりが頭に浮かんだ。
土方の姿をやっと忘れた時に頭に浮かぶのは、箸を置くそれぞれの姿だった。
人斬りの少女の弱々しい声音は、沖田ただ一人に届き、空に消えた。
静かに過ぎて行く時間の中で、陽がそれ以上言葉を発することはなかった。
暫く新撰組と時間を共にすることで、ようやく人間らしさを取り戻し始めた陽だからこそ、少なからず心に傷を作っていた。
そんな陽を見て、沖田はそっと手を伸ばす。
そして、頭に触れるという直前でピクリとその手を止めた。まだ、心の距離は随分と遠い。
手先一つ触れる行為が、いつもよりも躊躇われた。
あまりに美味しくないと、最もらしい答えを気を遣いもせずに沖田が言うせいで、その後の気持ちは嬉しかった。という言葉だけは信用してしまう。
情けのようながら、陽へとしっかりと向けられた優しげな笑顔を見て、陽は耐え切れず口を開いた。
「どうしてだ……。私の事を、突き放したり優しくしたり…。私をからかいたいだけなら、今すぐ解放してくれ」
陽の頭に浮かぶのは、陽を気にかける山崎、斎藤、山南の姿や、機嫌の悪い原田の姿。
視線で気にかけてくる永倉や、自分の背を見上げる藤堂、涙を流し抱きしめてくる近藤、甘味処へと連れる沖田の後ろ姿だった。
だが、決まって最後に思い出されるのは、激しく自分を叱咤する土方の姿だった。
照れた顔をして陽のために購入してくれた着物を見せる姿を塗りつぶすかのように、無理に炊事を押し付けられた事ばかりが頭に浮かんだ。
土方の姿をやっと忘れた時に頭に浮かぶのは、箸を置くそれぞれの姿だった。
人斬りの少女の弱々しい声音は、沖田ただ一人に届き、空に消えた。
静かに過ぎて行く時間の中で、陽がそれ以上言葉を発することはなかった。
暫く新撰組と時間を共にすることで、ようやく人間らしさを取り戻し始めた陽だからこそ、少なからず心に傷を作っていた。
そんな陽を見て、沖田はそっと手を伸ばす。
そして、頭に触れるという直前でピクリとその手を止めた。まだ、心の距離は随分と遠い。
手先一つ触れる行為が、いつもよりも躊躇われた。
