幕末の雪

『言われなくとも…僕は最初から殺す気ですよ芹沢さん!』


暗殺任務に自分が組み込まれた時、近藤のために尽くすにはこれが一つの区切りであると決意した。


いずれ芹沢が近藤派によって抹殺されることはわかっていた。


だが、その中でも親しみのある自分が、父のような愛を持ち接してくれた芹沢を殺すことには、迷いがないわけでは当然なかった。


鈍る刀を受ける度に、芹沢の力は強くなって行く。重くぶつかり合う刃の向こうで、芹沢は終始笑顔を見せていた。


沖田もそれを見て力を込めていく。そして芹沢はこぼす。


最期を飾るに相応しい、今までで最高の闘いである、と。


そして最後には刀を自ら捨て、沖田を向いて優しい笑顔を見せた。


『相変わらず優しいな。敵ならば迷わず斬れ。それから…お前には感謝せんとな。ありがとう』


視界がぼやけた中で、ありがとうという言葉に返したのは、それに不釣り合いな言葉だった。


最後の最期まで……


『芹沢さん…ごめん、なさいっ…』


崩れ落ちた沖田の横で、屍となった芹沢から溢れるほど血が流れていた。


ーーーー


振り下ろした刀が陽の肩に食い込むという寸前、沖田は勢いを殺した。


皮の切れる感触とともに、じわりと血が滲み始めた。


「総司……?」


「敵なら迷わず斬れ。……僕が陽を斬れないのも、陽が平助を殺さなかったのも理由は同じ」


「……」


「だよね」


藤堂の血が一番多く付着した場所から陽の座る位置はかなり近い。そして、藤堂が叫んだ後に駆けつけるまでは時間があった。


にも関わらず、藤堂は致命傷になる傷を負わされていなかった。