幕末の雪

「随分な挨拶してくれるね」


沖田はニヤリと余裕そうな笑顔を見せたが、内心は少し焦りがあった。


速かった。しかも、全く気配を感じられなかった。


力こそは自分に比べればずっと非力だが、速さだけでいえば自分を上回っているのではないか?


「山崎、副長に報告を」


「わかりました」


斎藤がそう言うと、山崎はすぐに闇に紛れて行った。


きっと山崎の事を止めようと思えば出来ただろうが、その人影は動きどころか視線も動かさなかった。


何が目的なんだ。


更に謎が深まるばかりだ。だが一つわかったのは、誰か特定の浪士を狙っているわけではないということだ。


沖田に突然襲いかかってきたということは、今までも相手に何かを確認することなく襲いかかったということになる。


「お前の目的はなんだ!」