幕末の雪

部屋から出ないことには問題がない…と言える。陽は丸二日間、全く食事をしていない。


このまま放っておけばまた振り出しに戻り、口も聞けない日々が続くだろうが、陽の部屋に行こうとすると土方の言葉が思い出された。


『だが俺は、鷹尾が自分で何かをしようとするのを待ちたい』


そうでなくては、この先何度も同じ事が繰り返される度に解決策を見出すのに頭を捻らなくてはならない。


結果いつまで経っても信頼は得られない。


以前までは陽を監視している最中でも、会話のあった広間は静まり返っていた。


料理を一口食べるだけで、二日前の出来事が思い出される。


普通の主婦が作るよりよっぽど下手な料理よりも、さらに下手くそな品々。


ひっくり返り散乱する水や、箸を置き部屋を出て行く自身らと一人、料理を食べる陽。


今までここで食べてきてどうしてあんな料理ができる、と言いたくなるような出来は、わざとではないかと疑いたいほど。


だがその料理で、こんなにも陽は傷ついている。


どうして、最後まで口にできなかったのか。


夕餉を食べ終えた藤堂は、立ち上がり陽の部屋へと向かった。


(やっぱり違う。待ってたって、陽は……)


頭の中に甦る様々な陽の姿。


その中でもやはり印象的だったのは、自らを助けてくれたその後ろ姿だった。


初めて会った日には、殺す気で自身に向けられていた刃が、逆に自身を守る刃になったこと。


そんな陽の気持ちをなに一つくめず、今日まで自分の事ばかりで……。