幕末の雪

それについて、信頼しかけた陽から助けを求められなかったから。などという綺麗事は言わない。


ただ、押し付けた自分自身が、ここまで陽の料理が酷いとは考えもしなかったのだ。


そうすれば、陽に無理矢理押し付けただけでなく、このような事態に陥った責任が土方に向く。


「情けねえ話だ。あいつに…俺は、それ以外の全部も押し付けようとしたんだ」


責任も迷惑も片付けも、嫌われ役も。本来、陽がこれから得て行くはずだったもの全てを失うようのものまで。


「なんていうか土方さん…」


それを聞いて沖田は笑顔を浮かべた。


「僕より最低ですね」


どんな状況であれ、やはり沖田は沖田だ。土方への対応は長年のものが染み付いている。


わかってはいるが、言葉に出されると土方だけでなく藤堂までため息を付くに近い感情になる。


((そこまでお前が言うか))


その表情に、また沖田は満悦そうな笑顔を浮かべるのだった。


「謝るつもりだったんでしょう?陽を呼んで」


「ああ。で、出て行くって言ったのか」


「ええ、まあ…。あの子にとっても、相当響いてるんじゃないですか?」


現に、朝から一度も部屋を出ていないらしいと聞く。


例え最近まで人を殺してきたにしても、まだ幼い少女であることには違いないわけである。


それを今回新撰組全員が敵に回るような対応を受け、傷つくなというのも無理なのかもしれない。


「わかってる。……だが俺はーーー」


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一件から二日が経った。


夕餉の席に陽の姿はない。あれから、沖田以外はほとんど一度も陽の姿を見ていない。