幕末の雪

ここで部屋に行けるぐらいなら、現時点でももっとマシな対応ができていただろう。


藤堂相手にため息を吐くと、藤堂は小さく縮こまった。


「で、どうするんです?土方さん」


「させるわけにいかねぇだろ。……わかってんだよ、陽を怒るのは筋違いって」


だがあの時は、陽を怒る以外に何かをするという選択肢すら見えていなかった。


「良かった。この後に及んであいつは人殺しだから…なんて言ったら、僕が土方さんを殺すところでした」


「笑顔で言うな」


沖田は口角をそっと下ろした後、一息ついて胸の内を言った。


「でも、僕の方が……。本当は、ありがとうって言おうとしたのに、謝っちゃったんです」


違う、と心が言うのを押しのけて、無理に笑顔まで作ってだった。


「頼る相手もいなくて、無理に押し付けられただけなのに、陽は僕達が起きる前にちゃんと作ってたんですよ」


「「……!」」


「それなのに、どうして僕達はそれに気づいてあげられなかったんですかね」


誰も気づいていなかった。


料理ができないと土方に言いながら、新撰組を信頼してもいないのに、それでも…わからないなりに料理してくれた。


沖田が広間に戻ると、陽は自分の朝餉を完食し終え、静かに土方の返した茶碗の片付けをしていた。


寂しそうに見えたのは気のせいでなかったように今では思える。


どんな料理でも、新撰組の隊士の数を考えれば、苦労したに違いない。


「俺は、餓鬼みたいに怒鳴っただけで、だが…あの時どうしてか苛々(いらいら)がおさまらなかった」