幕末の雪

陽の幹部隊士達からの特別な対応から察し、無理に食べてしまったという。


『わかった。隊士達を部屋に運ぶぞ』


部屋を後にする土方に続き、ぞろぞろと幹部達は出て行く。


まるで陽の料理を食べない口実合わせの機会とでも言うように、これ見よがしにだった。


その中で陽に申し訳なさを感じた頑固者たちが最後まで腰を下ろしていたが、廊下の足音が聞こえなくなるよりも前に出て行ってしまった。


最後に立ち上がった沖田は、陽の近くへと寄る。


『ごめんね、片付けは僕も手伝うから』


廊下を歩きながら沖田は思う。


そんなことを言うために陽の元へ言ったわけじゃない。あんな最低な言葉を吐く自分が不器用で、嘲笑う。


『ごめんね……』


呟いた時の沖田の目は、まさに人を殺す時のそれだった。


隊士の半数以上が体調を崩し、一日の隊務や稽古が行えないのは予想できる。


それに加え介抱にあたる隊士を含め多くの隊士が動けない事態に陥ってしまった。


だがそれよりも大きなものを失った気がしてならない。


『食わなければいい……』


そう言った陽の心情が掴めないせいで、無表情なその顔が一日中、何度もそれぞれで思い出された。


ーーーー


「刀を返せ、出て行く。ですって」


陽から告げられた沖田は、それからの粘りも虚しく土方の部屋に戻った。


「で、何で平助がいるの」


先ほどまで一人だった土方の隣に、用もなさそうな藤堂がそわそわと座っている。


「陽のことが心配で…」


「じゃあ部屋に行けば?」


「うう……それは無理」