幕末の雪

『さすがにこれは…な』


『だな』


他の面々も口を揃える。


多少の気は遣っていたつもりだが、料理が下手。では収まらない品が朝から並べば怒りたいのは土方達側である。


次々に置かれる箸の音を聞き、陽は口を開いた。


『だから言っただろ』


落ち着いた声で、だが陽が怒っているのは微かに感じ取れた。


ピクリと動く土方の眉と、拳に力がこもる。陽は視線を落として目の前に映ったその品々を見つめた。


作り方も知らない、作りたかったわけでもない、味も最悪なーーーー


『食わなければいい……』


それでも、初めての料理。


此処にいる男達のよりも到底不恰好で味付けもされていない。


そんな料理を作るさなか、それでも…食べてくれるなんて期待を心のどこかでしていた自身を恥じた。


藤堂と永倉が申し訳なさそうに目を合わせたりして、斎藤は料理に視線を戻す。


だが流石にこの中で箸をもう一度握るものはいなかった。


『何で誰も呼ばなかった』


『……』


質問した土方自身も、わざわざ陽が黙らずともわかっていた。


(陽に、今信頼して何かを頼めるやつなんていないだろ…)


殺伐とした空気の中ただ一人、沖田は笑顔を浮かべていた。


『局長!副長!隊士達が……!』


廊下を駆けてきた平隊士が慌てて告げる。察しはつくが、案の定隊士達は朝餉により気分を悪くしていた。


腹を壊すものや酷ければ嘔吐するものまでいるらしい。