幕末の雪

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「陽、土方さんが呼んでるよ」


それから時は流れて夜になる。いたって変わりない空模様の下で、沖田は優しい声色で言った。


見れば自室の壁に寄り添うように背を預けながら、俯きがちに陽は座っていた。


「……」


「陽。僕もついていこうか?」


部屋の中に侵入しようとする沖田の足元を睨むように横目で捉える。


別に怖くて動けないわけでも、申し訳ないわけでもなかった。


ただ、簡単に言えば、少しマシに思えてきた人たちを嫌いになった。それが正しかった。


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時を遡り朝へと戻る。


朝餉の時間、屯所を割るかのような怒号と共に、茶碗が数個割れる音が響いた。


『お前な、ふざけてんのか!』


お膳のひっくり返った足元を避け、土方は部屋の中を進み陽の前で足を止める。


陽は進めていた箸を止め、無表情で土方を見上げた。


『こんなもん食えるか!不味いにも程があるだろ!』


自分が調理を強制したにも関わらず、流石に言い過ぎではないかと思えるが、お膳の上に並ぶ料理とも言えぬ料理を見る限り正しい方がどちらかわからない。


米は取り敢えず水に浸したようだが、炊くという過程を得ていないようで、ただの水に浸した米だった。


味噌汁は、ただの水に適当な野菜類を入れ込んだだけ。


他もそのような品が並び、マシなものといえば切ってある大根ぐらいだった。