幕末の雪

邪気のない鋭い眼光は、逆に反抗する小さな子供のように可愛く見えた。


陽を見て沖田は微笑む。


(意外と可愛いものだね)


「出来たてのうちに食べよ。睨んでないで、ね」


沖田は団子を一つ口に含み、その味を堪能しながら陽に目を向けた。


陽は食べ方から確認しているらしく、串の部分をゆっくりと持って口元に運んだ。


あまりにじっくりと見ていた沖田の視線が気になって、陽はまた睨む。


「見るな」


「はいはい」


視線を逸らして沖田は自分の分をいつも通り、人目から見れば尋常じゃない速さで食べ進めて行った。


味は相変わらずのもので、沖田も頬を緩めっぱなしだ。


抹茶を飲み終え、そろそろと沖田は陽の方を見てみた。


丁度最後のわらび餅を口に入れようというところだった。


口にそれを含んだ瞬間、陽は見たことがないほど柔らかな表情を見せた。


笑っているのとは程遠いが、陽が絶対に見せないような幼い顔。


「………」


その表情を見て沖田は一瞬考えを止めてしまった。


沖田の視線を感じて、陽が沖田に視線を向けると、また沖田は楽しそうに微笑んだ。


「また来ようね」


陽はそっぽを向いたが、小さく頷いた。


気のせいだとはわかっているが、一瞬だけ口元が微笑んでいた気がした。


ーーーー


それからまた一週間と時が流れた。


陽も何度か稽古と巡察をこなして来て、やることは大体つかめている。


沖田の言う通りに黙って遂行するだけだったが、沖田に話しかけられれば無視する事なく答えていた。