幕末の雪

風呂敷に入っていたのは、着流しや袴などでどれも新品だった。


袴は紺色や灰色、黒色など落ち着いた暗い色が多かったが、着流しは明るめの色がほとんどだった。


とは言っても柔らかく淡い暖色で、遠くからでも目立つような派手なものではない。


「呉服屋の店主の娘に頼んで選んでもらった」


通りで土方にしては女性らしいものを選べたわけだ、と沖田は納得した様子。


白い生地に銀色の刺繍を施した下地に、橙色に近い桃色を滲ませた淡色の着流しを、気に入ったのか陽は手にとって数秒見つめた。


全てに目を通した後、陽は風呂敷の一番下にもう一枚着流しが入っている事に気がつく。


着流しにしては妙に鮮やかで、柄がついている。


それを陽が手に取るなり、土方はわかりやすくまた顔を背けた。


「それも俺は選んでねえからな…!」


(これは……?)


明らかに着流しとは見た目も触り心地も違うその衣服を、陽は広げて見た。


「あ……」


一瞬で目が奪われた。


描くように刺繍された金色や、染められた鮮やかな色達。


細部の一つ一つが丁寧な造りは、刀を振るう自分のために用意されたものではない。


それは女物の着物だったのだ。


「土方……」


着物から目を離すことなく、陽は呟くように言った。


「たまには女物ぐらい着ろ」


土方の頬は少し赤い。


呉服屋でつい買ってしまったが、いざ渡してみると一番反応を見るのが怖かった。


しかし陽の声はどこか嬉しそうに聞こえ、良かったとは思う。照ればかりはどうしようもなく顔に出るが。