幕末の雪

「本当ですか?それなら良かった」


沖田は陽の隣に腰を下ろし、土方がまだ怒っているらしく笑顔だけは絶やさないようにした。


「で、僕まで呼んでどうしたんです?」


「鷹尾の羽織が届いた。今日から一番隊に合流だ」


土方は紫と白が綺麗に交わった淡い色の風呂敷を取り出す。


上質そうな風呂敷が包んでいる量は、明らかに羽織だけではない膨らみ方をしていた。


それに風呂敷の触り心地の良い感じは、羽織と比べても断然だ。


買ったついでに貰ったのだとしたら、他にもっとお金のかかるものを購入したに違いない。


陽は風呂敷の中が気になり、その場で開き始めた。


一番に映り込んだのは浅葱色。


綺麗に畳まれた羽織は隣にいる沖田や土方、新撰組の隊士達の物と全く一緒だった。


ただ、新品で色ははっきりと生き生きしている。


その上には小刀が乗っていて、黒色の鞘に金色で桜の花弁が描かれた上品な柄だった。


それを胸の前まで持ち上げた後、陽は土方の顔を見た。


「お前が女な事は見ればわかる。必ず持っとけ」


それは土方なりの気遣いだった。


女の陽が刀を持っていない時に力で男と勝負となると、やはり不利なところがある。


陽の事だし敵から逃げたりはしないんだろう、という推測もあった。


刀をしまい、陽は羽織をずらして風呂敷に包まれた物を順番に見て行った。


「へえ、これを土方さんがねぇ……」


風呂敷の中身を無言で見る陽と沖田の冷やかす視線を受け、土方は顔をそらした。