それは一件の数日後の昼。


「鷹尾、後で俺の部屋に来い」


早くに昼餉を食べ終える陽を見計らって、土方は昼餉を食べ始めてすぐに陽に声をかけた。


「ああ」


陽の態度は相変わらずだが、それについて誰かが何かを思うことはない。


最初の時に比べれば、普通に返事してくれることも当たり前になってきていて、成長したと思えるぐらいだ。


「それから総司。お前もだ」


「僕もですか?」


呑気そうな声で尋ねる。


「今日は巡察ない日だろ」


「はいはい、逃げたりしませんよ」


また呑気そうに答えた沖田に、土方はフンと一瞬そっぽを向くような態度をとって箸を進めた。


別に沖田が来ないと思っているわけではないが土方が絡むと、どうも沖田は予想外の行動に出る性分らしい。


近藤同席の場や新撰組の隊務に関わる時は真面目に振る舞っても、土方と二人になればやりたい放題。


現に沖田は他の知らない、「豊玉発句集」という土方の弱みを握っているわけであるし。


(あの子と同席の場で、僕がやらかすわけにいかないでしょ)


それでも、組長としての誇りはしっかりと持っており、陽への責任意識も持っていた。


何時ものように各々が箸を進め、会話をしながら昼餉の時間は過ぎて行く。


隅っこに置かれたお膳を藤堂はチラチラと盗み見るように見ている。あれ以来、妙に陽へと目が移ってしまう。


理由はわからない。


(陽もこっちで、皆と食えばいいのに……)


今日も一番に食べ終えて、広間を出て行く陽。


あれで心が少しは開かれていたと思っていたが、陽の方は違ったらしい。


(陽と、仲良くなりたい…)