Please be absorbed in me




***


なんとか平静を保って夕食を終え、私はこっそりと安堵していた。

お兄ちゃんに怪しまれることがなかったから、顔に出ていなかったのだろうか。


食事中、不意に目が合うと、浩人さんは優しい笑顔を見せた。

その表情に水を吹き出しそうになったのを、お兄ちゃんに「何やってるんだ」と笑われた。




「はい、残念。俺の勝ちー」



お兄ちゃんの手札2枚のうち、右の一枚を引いた私にお兄ちゃんが言った。

カードをひっくり返すと、絵柄はジョーカー。



「負けた…」

「お前、ババ抜き弱いよな」



机に突っ伏して息をつく。

お兄ちゃんは笑いながら、私の頭をぽんぽん、とした。



「ていうか、2人でババ抜きってカード3枚から始めてもいいよね?
どっちがジョーカー持ってるかなんて分かってるんだし」

「それはまぁ、雰囲気だよ。な?」

「雰囲気って…」



ババ抜きに雰囲気も何もないでしょう。


あきれ顔でお兄ちゃんを見上げて、ふと視線を感じた。

視線を巡らせると、横で何やら書きものをしていた浩人さんと目が合う。



「っ…」



思わず目をそらしてしまい、しまった、と思った。

でも、浩人さんの顔が見られない。

じっと見つめてくる瞳が、いつもより熱っぽくて、飲み込まれてしまいそうになる。