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なんとか平静を保って夕食を終え、私はこっそりと安堵していた。
お兄ちゃんに怪しまれることがなかったから、顔に出ていなかったのだろうか。
食事中、不意に目が合うと、浩人さんは優しい笑顔を見せた。
その表情に水を吹き出しそうになったのを、お兄ちゃんに「何やってるんだ」と笑われた。
「はい、残念。俺の勝ちー」
お兄ちゃんの手札2枚のうち、右の一枚を引いた私にお兄ちゃんが言った。
カードをひっくり返すと、絵柄はジョーカー。
「負けた…」
「お前、ババ抜き弱いよな」
机に突っ伏して息をつく。
お兄ちゃんは笑いながら、私の頭をぽんぽん、とした。
「ていうか、2人でババ抜きってカード3枚から始めてもいいよね?
どっちがジョーカー持ってるかなんて分かってるんだし」
「それはまぁ、雰囲気だよ。な?」
「雰囲気って…」
ババ抜きに雰囲気も何もないでしょう。
あきれ顔でお兄ちゃんを見上げて、ふと視線を感じた。
視線を巡らせると、横で何やら書きものをしていた浩人さんと目が合う。
「っ…」
思わず目をそらしてしまい、しまった、と思った。
でも、浩人さんの顔が見られない。
じっと見つめてくる瞳が、いつもより熱っぽくて、飲み込まれてしまいそうになる。

