Please be absorbed in me



***


「謙也様、真琴様、お風呂の用意ができておりますが、いかがいたしますか?」



浩人さんにそう声をかけられて、初めて時計を見る。


夕食を終えてそのままお兄ちゃんとぐだぐだと喋っていたら、思ったよりも時間が過ぎていて驚いた。



「もうこんな時間か…」



お兄ちゃんも同じだったのか、そう言いながらのびをする。



「お前、明日部活は?先に入るか?」

「明日は午後からだから、まだ大丈夫」

「んじゃあ、俺行ってくるわ」

「はーい」

「かしこまりました」



立ち上がって部屋を出て行くお兄ちゃんを見送って、自分ものびをする。

長い間かたまっていたからか、肩の骨が音を立てた。



「明日、午後からなんだ」

「…はい、そうです」



浩人さんの突然の口調と、言われた内容に戸惑って,思わず返事が短くなる。


なんか、やっぱり変。妙に無表情。

じっと見つめられてる。

その目は何か訴えるような、何か言いたげな様子。

大きな犬みたい…って言ったら失礼かもしれないけど。



「浩人さん…?」

「ん?」



呼べば、顔を寄せて、鼻にかかるような甘い声が答える。

甘い、甘やかすような声。



「なにかあったんですか?」

「なにかあったと思う?」



質問返し。

こういうときの浩人さんは、何を考えてるのか分からない。




「私、何かしましたか?」



そう問えば、浩人さんは顔を離す。



「お兄さんがいて、うれしそうだね」

「え…」



それは、どういうこと…。

聞こうとした言葉は、伸びてきた手にクシャリと頭をなでられて続かなかった。