ためらいがちのノックに顔を覗かせた浩人さんは、優しく笑った。
「どうしたの」
「…あの、」
いい言葉が見つからない。
一緒に出かけませんか。それは直球すぎて恥ずかしくなる。
なんかこう、うまい言い回しが…
「とりあえず中、入って」
浩人さんはドアを大きく開いて、目の前で固まっている私を引き入れる。
部屋で2人きり。
めずらしいことではない。
なのに、こんなに緊張してる。
自分から行動するのって、こんなに勇気がいるものなんだ。
「真琴、こっち」
腕を引かれてベッドに座る。
執事服をまとった浩人さんが、すぐ隣に腰掛けた。
「出かけましょう」と切り出すよりも抱きつくとか、手を握るとか、その方がこの状況ではやりやすいかもしれない。
外で手を繋ぐのは、まだ少し周りの目線が気になってしまう。
「どうかしたの?」
下から覗き込むように、膝に肘をついてその上に顔を乗せ、私に視線を投げる。
触れたい、と思った。
眼差しも、声も、全部が愛おしい。
その眼差しで、その声で、どれほど私を恋しくさせるのだろう。
触れたい。触れてもらいたい。
でも、浩人さんの手は指を組んで顔の下。
手は繋げない。

