Please be absorbed in me



***

「それで、何を隠してるの?」


ノックしたのは井筒さんで、おじい様からの伝言を伝えられた。

話を終えて戻ると、浩人さんが首をひねる。

私が座っていたイスに腰掛けている。


「やっぱり全部分かってるんじゃ…」

「なんか様子がおかしいな、と思うくらいだよ」


疑う私に、浩人さんは笑う。


「何を隠してるのかまでは分からないよ。カマかけみたいな部分もあったし」


「カマかけって…。ずるいです」


「大人はずるいものだよ」


…ずるい。

不敵に笑って私の手を取るから、抗えない。

引き寄せられて腰のあたりに腕が回る。

少し下から見上げられることに、心臓が音を立てている。


「で、なにがあったの?」


再びの問いかけに、少し迷ってから、その目を見つめる。


「告白、されたんです。同級生に」

「それは妬けるね」

「断りました」

「そうでなきゃ困るよ」


浩人さんの瞳は揺るがない。

ほっと息をついた。

不安にさせたくない、という私の心配はどうやら杞憂に終わったようだ。


「それで?」

「…?それだけですよ」


やっぱり、報告するほどのことでもないような気がする。

本当に「それで?」っていう話。


「泣きそうな顔をしてたのは?」

「そんな顔、してません…」


思い当たる節がない。


「帰ってきてすぐ」


浩人さんが目を細める。


「俺を見て、泣きそうな顔をしたよ」


言われて、思い当たった。

それは多分、安堵だ。

迎えてくれた浩人さんがいつも通りで、安心して、それが愛しかった。

大事で、かけがえのない人。

この人に拒絶されたら…そんな不安から解放された気の緩みだった。


「浩人さんに会ったから、です」

「泣きそうになった理由?」

「安心したんです」

「何を不安になってたの」


その質問には答えず、いつもと違う身長差で浩人さんを抱きしめた。


この腕で抱きしめられる
その腕に抱きしめられる


それが出来る限り、きっと私の不安も杞憂に終わる。