Please be absorbed in me



「本日はお買い物に行くということなので、準備が出来次第うかがいます」


朝食を済ませて自分の部屋に戻ると、部屋を出ていく間際にそう言われた。


「え、買い物?」


心当たりのない話に首をひねる。


「おじい様からそのように、と」


せっかくの春休みに家にこもるのはもったいないのは確かだ。


「わかりました」

「少々お待ちください、準備して参ります」


扉が静かに閉じる。


(少し肌寒いから一枚羽織って行こう)


目当てのカーディガンを探そうと、部屋に備え付けられたクローゼットを開けてみる。


「クローゼット広い…」


持ってきた自分の服がきれいに並べられているけれど、スペースの半分以上は空いていた。

(こんなに多くの服は買わないかな…)


「お待たせいたしました。…真琴様?どうかされましたか?」


「…クローゼットが広いな、と」

「おや、左様ですか?真琴様は手持ちの服が少ない方だと思いますよ」

「普通くらいだと思います…」


私の感覚は一般的なはずだ、と思いつつ不安になって声が小さくなった。


(感覚のズレが怖いな…)