「してるよ」
全部、分かっているんだろうか。
そう疑いたくなるような雰囲気をかもし出して、浩人さんは私の髪に触れる。
「帰ってきてから様子が変だよ」
「普通、です」
髪から頬に、手が伸びてくる。
「泣きそうな表情で、手を伸ばした」
泣きそうな表情をしていたかは知らないけど、確かに手を伸ばし…かけた。
おじい様がいたから、踏みとどまった。
けど、浩人さんはその一瞬に気づいていた。
だって、不安だった。
「だって、浩人さんに会いたくて急いでたから…」
告白を断ることは、大げさに言えば相手を拒否すること。
私と浩人さんは両思いだけど、それが一方通行になる可能性だってないわけじゃない。
そう考えたら急に不安になって、早く会いたくなった。
会って、執事ではない笑顔を見て、安心したかった。
そうして実際に会ったら気が抜けて、無意識にすがりつきそうになってしまった。
「なんで俺に会いたかったの?」
「…分かってるんじゃないですか?」
つっけんどんに返せば、浩人さんは微笑みを浮かべる。
あ、この笑顔…。
「分かんないから教えて」
やさしい笑顔、のように見えて私を追い詰めようとする目をしている。
逃げようとすると追いかける。
浩人さんはそういう人だ。

