正直まだ、早く大人になりたいと思う。


でも、焦らなくていい。

浩人さんの隣で大人になれるなら、ゆっくりでいい。

すぐ隣に浩人さんがいてくれるなら、それでいい。


抱きしめられる力が心地いい。

この温もりがあるなら、私は焦ったりしない。

隣に居ていい、と言われてると思うから。


「真琴、そろそろ部屋に戻る?」


声をかけられて初めて、自分が目を閉じていたと気付く。

目を開いて顔を上げると、近くに顔がある。


「…もうちょっと、居たいです」

「……」

「…浩人さん?」


名前を呼ぶと、返事の代わりに視界を塞がれる。

浩人さんの手が目を覆った。


えっ、何。見えない…。


「ほんとに、もっと警戒心とかを…」


あたふたする私に、浩人さんの呟きが聞こえた。