この空間に慣れようとするだけで精一杯で、楽しむなんて余裕はない。
早く大人になりたい。
この場に馴染めるように、このドレスが似合うようになりたい。
「真琴様?」
どんどん自分の顔が俯くのを自覚してるけど、顔を上げられない。
だって目の前に立つ人は大人で、私は子ども。
恥ずかしい。自分が嫌だ。迷惑をかけたくない。
「少し疲れたのかもしれません。でも、もう大丈夫です」
息を吸って顔を上げて、笑顔を浮かべた。
じっと見つめられる。
うかがうような、心配するような表情。
「では、新しいお飲み物をお持ちいたします」
浩人さんは微笑んで、小さく会釈してから背を向けた。
飲み物を取りに行った浩人さんの背中を眺めながら、後ろの壁にもたれる。
(誤魔化せた、のかな。迷惑かけてないといいけれど…)
ぼんやりと会場を眺めていると、テレビでも見てるように思えてくる。
まるで異世界で、その空間に馴染めるようになるのだろうかと不安になる。
何度目かのため息をついて、戻ってくる浩人さんの姿を見つける。
私は深呼吸して、壁にもたれかかっている体を起こした。

