会場の中に入れば、そう堅い雰囲気ではないけど馴染みにくい空間が広がっていた。
「飲み物はいかが致しますか?」
「…いただきます」
少しでも緊張をほぐそうと、浩人さんの言葉に頷く。
フットマンから飲み物を受け取ったものを渡されて、一口飲んだ。
浩人さんに案内されるままに会場内を歩くと、昔から交流があった人達が声をかけてくれる。
「やぁ、大きくなったねぇ」
「お久しぶりです」
少し後ろに下がった浩人さんを横目に、目の前の人に笑いかける。
「こういう場所に来るってことは、真琴ちゃんが紀道(のりみち)さんを継ぐのかい?」
「いえ、継ぐのは兄です。もう海外でおじい様の手伝いをしています」
「あぁ、謙也(けんや)君か。彼は元気そうかい?」
「はい、よく写真が届きます」
「それはいい。今度よろしく言っておいてくれ」
「はい」
「じゃあ、また機会があったら」
片手を上げたその人にお辞儀をして、人混みに消えてく姿を眺めた。
(緊張した…)
作った笑顔と緊張のせいで頬が痛くなり、密かに手でぐりぐりとほぐす。
そうして振り向いてみれば、そこには浩人さんの優しい笑顔があって、ほっと息をつく。
近づくと微かに浩人さんの香り。
差し出された手に自分の手を重ねれば、その温もりが伝わってくる。
服装は執事、でもそこにいる人は自分の恋人だと胸が温かくなるのを感じた。

