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「やっぱり帰りたいです…」
会場を目の前にして、自分は場違いだとしか思えず立ち止まる。
「なにも心配はありませんよ」
うなだれる私に、浩人さんは優しく声をかけてくれた。
「私がついています」
そういって私の右手を取り、やさしく誘導してくれる。
今日は終始、執事として振る舞うらしく、ずっと敬語のまま。
今の私はパーティーのことで頭がいっぱいだから、浩人さんは気をつかってくれてるのだろう。
「ドレスもよくお似合いです」
意を決して浩人さんの横に並ぶと、顔を覗き込まれる。
言葉と共に向けられた視線は熱をもってて執事としての言葉じゃないと分かる。
けど、今この状況で言うのは、頭が追いつかないからやめてほしい。
「ありがとう、ございます…」
つっけんどんに返せば、浩人さんは楽しそうに笑う。
(あ、分かっててからかってる…)
少し睨んでみても、浩人さんの相変わらず笑ったまま、私の耳元に口を寄せた。
「赤い顔で睨んでも、逆効果ですよ?」
「…っ」
ふっと笑った浩人さんに、余計顔が熱くなるだけだった。
前言撤回。
浩人さんは、私が緊張してるのを見守ると同時にたまにからかう。
からかって、楽しんでる。

