「…浩人さんと、出かけたいです」
「うん、どこに行こうか?」
「…っ!」
待っていた、という風に笑って、片手で私の頭を引き寄せ、そこに軽く唇を押し当ててから浩人さんが立ち上がる。
一気に熱が上がった顔を手で隠しながら、浩人さんを鋭く見上げた。
「それは浩人さんが決めてください」
睨んでみたのに、浩人さんは楽しそうに笑う。
そして、その手が私の頭に伸びる。
(あ、また触れる…)
優しく頭を撫でる手が最初は恥ずかしくて、私はつい逃げていた。
でも、一度逃げると浩人さんは意地が悪くなるので踏みとどまることを覚えた。
笑顔のまま、やわらかく、確実に私を追い込んでくるからタチが悪い。
きっと、逃げられると追いかけたくなるような人なのだろう。
(…そんな人が好きって、私は大丈夫なのかな)
「じゃ、お嬢様の希望通りに」
「…仕向けたのは浩人さんでしょう」
すっと軽やかに手を取られ、大きくてあたたかい手と繋がれる。
執事というよりも王子みたいな仕草に顔が熱くなった。
私の冷たい返しを浩人さんは気にした様子もなく、繋いでいる手にぎゅ、と力が込められた。

