Please be absorbed in me



「…そんなこと言わなくていいです」

「でも、そうしないと俺と付き合ってくれないんでしょう?」

「それは…」



自分でも何が言いたいのか分からない。

でも、気持ちを打ち明けるのと付き合うのは別の話で、もう一歩で立ち止まる。


「なんで釣り合わないと思うの?」


相変わらず近いまま、言葉を探す私に浩人さんが言う。



「…浩人さんは立っている場所が違うからです」

「どういう意味?」

「…年の差もあると思います。でも、それを無視しても、浩人さんは何でもできて、すごい人なんです」

「……」

「私よりもずっと先を歩いてて、追いつける気がしないくらい遠い人…」



言葉にするとダメだ。

その通りだと、現実がまた目の前に立ちはだかる。

遠くて、高い場所にいる人。
一体どれくらい頑張ったら、追いついて隣に並べるんだろう。


言葉を続けられなくなって、こぼれそうになる涙を隠そうと顔をそらした。



「その、すごいと思ってる人が自分のこと好きって、自信にならない?」

「……え?」


紡がれたその言葉は完全に予想の斜め上で、私は思わず浩人さんの顔を見つめる。

その言葉ををかみ砕いて、意味をなぞってみて、次第に胸の中にじわりと染み込む。


そう、かもしれない。



「どう?」



やさしく微笑まれて、つられて顔が緩む。


「その通りです…」


私が並び立てないと思うほどすごい人が、私を好きだと言ってくれる。

それは、発想を変えてみれば確かに自信になる。


(やっぱり、すごい人だ…)


見つめた先で、浩人さんは相変わらず優しく目を細めて笑う。

その笑顔に満たされたような気持ちで、私は自然と顔を緩ませた。