着替えを済ませて廊下に出ると、私の執事と名乗る男の人は私に笑顔を向ける。
「朝食の用意ができております」
私と姿を認めると、手振りをつけてそう言った。
その手が示す方向には、たしか食堂がある。
私はその手をじっと見つめて、それから、距離をとったまま微笑む顔を見上げた。
「お祖父様の部屋はどこですか」
「突き当たりを右に曲がり、一番奥まで進んだところで右にございます」
「ありがとうございます」
言われた方向に歩き出すと、執事さんが横に並んだ。
「真琴様、お祖父様は本日出かけております」
「…どこにですか」
「会食に参加なさっています」
「帰りはいつ頃ですか」
「夜になります」
私は足を止めた。
執事の話をなしにしてもらうにも、雇い主のお祖父様がいないのなら話が始まらない。
少なくとも今日の夜までは、この人が私の執事として一緒に行動してくれることになってしまった。
私はなんとなく重たい気持ちで、目線を足元に落とした。
「こちらへどうぞ。朝食が冷めてしまいますよ」
男の人は、やわらかく微笑んで言う。
(どうしようもないよね…)
私は半分諦めたような気持ちで、ひとまずはこの執事さんに大人しく従うことにした。

