ーside 浩人ー
「真琴様…」
見つめる顔は、少し赤みがかっている。
そらされてしまった瞳は潤んできれいだ。
こんなにも分かりやすく表情を変えるのに、それでも受け入れてくれない。
なんで俺のことが好きって顔をして、言葉では拒絶するんだ。
ちぐはぐなその行動の裏に、何を隠しているんだろう。
「ね、こっち向いて」
背中に声をかけると、肩が少し反応した。
口調を変えると本当に分かりやすく表情を変える。
そんな様子がかわいくて、ついころころと自分の立ち位置を変えてしまっていた。
でも、今は1人の男として向き合いたいから。
「…いやです」
小さい声で彼女は言う。
「真琴、こっち見て」
やわらかい口調を心がけて、繰り返す。
「…っ」
名前を呼んだからか、またその肩がピクリと動いた。
でも、顔は見せてくれないままだ。
「俺のこと、好き?」
「……好きじゃ、ありません」
淡々と突き放すような言葉を紡ぐその体を、そっと後ろから抱きしめた。
「やめてください…」
そんな非難の言葉とは裏腹に、彼女はされるがままだ。
振り払うことだってできるのに、そうしないでいる。
ちぐはぐだ。
一体、何を思って嘘をつくのだろう。
「俺のこと嫌いなの?そんな表情してるのに」
「…っ、そんな顔って、なんですか」
弾かれたように腕の中から離れて、その瞳が鋭く俺を見つめる。
泣きそうなほど潤んだ瞳は、雄弁に語るのに。

