気まずい、とは思う。
でも、どうしたらいいのか分からない。
話を切り出すのも難しくしてしまった。
部屋の机で課題を広げたはいいけれど一向に手は動かず、何度目かのため息をついてシャーペンを置いた。
執事としての仕事を完璧にこなすことは忘れず、ここ最近の浩人さんは普通だった。
あまりにも様子が変わらなかったから、なかったことにしているのかも、とも思ったけれど、それは違った。
目線が合うと、何か言いたげにじっと見つめられる。
深く吸い込まれそうになって、私が先に目線をそらすのが大抵だった。
浩人さんは何も言わない。
このままずっと気まずいまま、というのは問題がある。
でも、浩人さんの気持ちに応えられないと曖昧に突っぱねたのは私の方。
あの時点でこうなると予測して覚悟ができてなかった自分はやっぱり未熟な子どもだ。
(浩人さんは私の執事をやめるのかな…)
その方がいいのかもしれない。
自分の中の感情は、奥の方にしまい込んでしまえばいつか薄れる。
離れれば、気持ちはいつか忘れられる。
初恋が一瞬ぶり返しただけのものだと思えるはず。
「真琴様、少しよろしいでしょうか」
ノックの音に続いて、そんな言葉が耳に届いた。
扉の向こうで待っているのは浩人さんだ、と声で分かって焦る。
全然よろしくない。
でも、逃げてばかりじゃどうならない事も分かっている。
それに、何か重要な用事かもしれない。
自分に言い聞かせて、最後に向き合う覚悟を決め、扉に近づいた。

