Please be absorbed in me



ーside 浩人ー


「真琴様…」


見つめる頬はうっすらと赤い。
逸らされてしまった瞳は、潤んできれいに揺れている。

こんなにも分かりやすく表情を変えるのに、それでも受け入れてくれない。

なぜだろう。
どうして俺のことが好きって顔をして、言葉では拒絶するのだろう。
ちぐはぐなその行動の裏に、何を隠しているんだろう。


「ね、こっち向いて」


声をかけると、肩が少し反応した。

口調を変えると、本当に分かりやすく表情を変える。

そんな様子がかわいくて、ついつい自分の立ち位置を変えてしまっていた。

でも、今この瞬間は、自分自身でちゃんと向き合いたいから。


「…いやです」


小さい声が拒絶の意思を伝える。


「真琴、こっち見て」


やわらかい口調を心がけて、繰り返す。


「…っ」


名前を呼んだからか、またその肩がピクリと動いた。

でも、顔はこちらを見ないままだ。


「俺のこと、好き?」

「……好きじゃ、ありません」


明確な否定の言葉に、胸の奥がチクリと痛んだ。

でも、楓は震える声で突き放すような言葉を紡ぐ。
少しの意地悪も込めて、握っていた手を引き寄せ、その指先にキスをする。


「やめてください…」


そんな言葉とは裏腹に、彼女はされるがままだ。
振り払うことだってできるのに、そうしないでいる。

俺は指先に唇で触れたまま、目線を上げて真琴を見つめる。
目が合って、潤んだ瞳が溢れそうになっていた。

ちぐはぐだ。

一体、何を思って嘘をつくのだろう。


「じゃあ、俺のことが嫌い?そんな表情して」

「…っ、そんな顔って、なんですか」


弾かれたように、握っていた手に力が入り、次の瞬間には手を振り払われる。
そして、その瞳が鋭く俺を見つめる。

泣きそうなほど潤んだ瞳は、雄弁に語るのに。