「ごめんなさい、先に着替え…」
「俺、困らせてる?」
かぶせられた声は、言葉とは裏腹なトーンに聞こえた。
見つめた先の表情も台詞と合っていない。
まるでその質問に対する私の答えが分かっているような声で、表情で、投げられた問い。
私は何も言葉を返せなかった。
「好きだよ」
「……っ」
「知ってると思うけど」
初めてはっきりと言葉にされて、胸が高鳴ると同時に苦しくなる。
うろたえないでいられるほど、私の精神力は強くない。
嬉しいと思うのに、苦しい。
私も好きなのに、自分に自信がないから頷くことなんてできない。
それなのに自分の顔が熱い。
嬉しさで胸が甘く切ない。
「……知りません」
私の小さな呟きに、浩人さんは不思議そうに首をひねったように見えた。
「そんなこと、知りません」
はっきりと言い放ち、浩人さんの反応も待たずに足を踏み出した。
浩人さんの横を足早に通り抜ける。
「真琴っ、…」
振り返らずに廊下を進んだ。
浩人さんなんて好きじゃない。
絶対に、好きじゃない。
言い聞かせるように繰り返して、霞んだ視界を腕で拭う。
浩人さんの声が耳から離れなくて、閉めた部屋の扉によりかかり、震えるため息をついた。

