Please be absorbed in me


***

「で、そのまま気まずいの?」

「うん…」


次の日、午後からの部活が終わった後、圭ちゃんを誘ってファミレスに入り、自分の中で押し留めていたものを吐露した。


「真琴もその人のこと好きなんでしょ?」


その質問で、圭ちゃん言いたいことは分かった。

私が自分の想いを伝えれば、確かに一瞬で解決する話だ。
でも、今のまま気持ちを伝えたとしても、その先が全く想像できない。


「…私じゃ釣り合わない」

「うーん…相手が年上だとそう思っちゃうよね。向こうはもう働いてるわけだし」

「うん…」

「ただ、真琴が気にしすぎだとも思うけどね」

「だって、浩人さん、すごい大人なんだよ。隣に並び立つのはきれいなお姉さんだよ」

「向こうは今の真琴を好きって言ってるんでしょ。なら、そんなに気負わなくていいんじゃない?」


気負っている。
確かにそうかもしれない。

でも、気にしないなんて無理だ。

浩人さんの隣に並ぶならどうしても意識してしまう。


「難しく考え過ぎなくていいんじゃない?」


私が難しい顔をしていたのか、圭ちゃんはオレンジジュースを赤いストローで飲みながら言った。


「私、自信がほしいんだと思う」

「自信?」

「あの人の隣に並び立てる自信。今の私には到底ないけど…」

「どうやったら自信つくの?」

「……わかんない。けど、付き合ったとして、浩人さんかっこいいから、ライバルがたくさんいると思う。その中には私よりもずっと魅力的な人がいるだろうし、そんな人たちに負けない自信がない」


感情が溢れ出したら止まらない。
圭ちゃんに甘えて、私は言葉を続ける。


「いつか、浩人さんから手を離されるのが怖いの」

「…真琴、もう相当好きじゃん。その人のこと」

「…うん」


圭ちゃんは困ったように笑って、私がまだ一口も飲んでいない烏龍茶のグラスにも赤いストローをさしてくれた。


「自信なんてさ、きっと後からついてくるものよ」


グラスを私に近づけて、圭ちゃんは言葉を続ける。


「未来のことなんて誰も分かんないし、付き合ってからどう頑張るかじゃない?」

「うん…」

「とにかく真琴は、その人に抱きついて『好きです!』って言えばいいの」

「え」

「わかった?」

「……」


圭ちゃんの圧に押されて思わず小さく頷くと、圭ちゃんは満足そうに笑った。


(それができたら苦労はしないけど…)


頷いたものの、やっぱりこの気持ちを伝える勇気はまだない。

自信がほしい。

同じところでグルグルと考え込むよりも、自信をつける方法を探してみるのが一番堅実な道かもしれない。

圭ちゃんの言葉を頭の中で繰り返してみながら、そっと息をついて目を伏せた。