Please be absorbed in me


***

「真琴、お疲れー」


午前の部活動が終わり、友達の圭ちゃんが遅れて女子部室に入ってきて、片手を小さく上げながら挨拶する。


「お疲れ」

「なんかあった?」

「え?」


的確な質問に驚いて、私は圭ちゃんの顔を見つめた。


「今日、やけに声に迫力があったから」

「え、うるさかった?」

「ううん。ただ、気迫があるなって思ってさ。迫力があるのはいいことだけど…」

(やっぱり変に思われてた…)


何かはあった。ありすぎてキャパオーバー。

特に昨日は、一日のうちに色んな感情が次々に押し寄せたからか、夜もなかなか寝付けなかった。

最後に時計を見たのが深夜1時頃で、その後、いつの間にか眠りについて目覚めた朝、ごちゃついていた頭は少しだけスッキリしたような気がした。

とはいえ、昨日から何も状況は変わっていない。

これからどうしたいのか、浩人さんへの気持ちをどうするのか、私はまだ考えなきゃいけない。


寝不足でいつもより気合を入れて集中する必要があったし、一旦何も考えたくなくて部活に全力で取り組んだのだけど、側から見たら変だったのかもしれない。


「いいんじゃない、たまには。『東堂はやる気があるなぁ!』って先生は喜んでたし」

「そっか」

「それで、何があったの?」

「うん、まぁ、いろいろと…ね」

「ふーん、まあ、無理には聞かないでいてあげましょう」


肩をポン、として圭ちゃんはあっけらかんとした様子で言った。


「…ありがとう」

「あんまり気を張りすぎたらしんどくなるよ」

「うん。しんどくなったら相談する」

「しんどくなる前に言いなさい」

「はい」


つん、と圭ちゃんに肩を指でつつかれて、笑みが溢れた。


「他の部員は気迫に押され気味だったけど、先生はかなり嬉しそうだったよ」

「いつも『剣道は声だ』って言ってるもんね…」


そうそう、と圭ちゃんは大袈裟(おおげさ)にため息をつく。


「ほんと面倒くさいわ」

「圭ちゃん、それ失言…」


圭ちゃんは気にした様子もなく肩をすくめた。