Please be absorbed in me



「真琴様、後ほどお部屋に伺いますね」


夕食を食べ終えて席を立つ私に、椅子を引いてくれていた浩人さんが声をかけた。


「…え?」


どうしてだろうと考えを巡らせ、すぐに心当たりを思い出して、「あ」と声を出した。


「お勉強しますよ?」

「…はい、お願いします」


にこっと笑う浩人さんに、苦笑いを返す。

色んなことをぐるぐる考え過ぎて忘れていたけれど、そういえば出かける前に勉強を言い訳にしようとして、浩人さんとそんな会話をした。


「こちらの用事が終わり次第、お伺いいたしますね」

「迷惑…というか、面倒じゃないですか?」

「いいえ、全くそのようなことはありません。真琴様と過ごす時間が増えて嬉しい限りです」


爽やかな笑顔の浩人さんを見つめて、思わず私はまばたきを繰り返した。

この人は、なんて事をサラッと言ってのけるんだろう。


(手慣れてる…。これ、私はなんて返したらいいの?)


自分の顔が熱くなるのを自覚した。
浩人さんの目の前で顔が赤くなっていたら誤魔化しようがないのに。


「…部屋に行ってますね」

「はい」


顔を見られないようにして言って、逃げるように早足で部屋に向かった。


(お祖父様がまだ帰ってなくてよかった。こんな顔見られたら何言われるか分かんない…)


廊下で誰とも会わなかったことに胸を撫で下ろしつつ、自室の扉を意味もなく急いで閉じた。