Please be absorbed in me



5つ駅を飛ばして降りた先は、一度も来たことのない街だった。


「この辺、来たことある?」


自分で言ったことなのに、いざ浩人さんの口調が違うと緊張する。

切り替えが早いことに驚いたけれど、それだけ頭の回転が早いのかもしれない。


「ないですね。初めて来ました」

「じゃあ、適当にふらふらしようか」


そう笑ったのは、1人の男の人。

執事じゃないなら、この人は私にとって誰なんだろう。

やっと本当に向き合えた気がして、密かに口元を緩めた。

隣を歩くのは、かっこよくて落ち着いた大人。

その目線が、仕草が年上の男の人だ。


(私の心臓がずっとうるさいのは、浩人さんが初恋の人だから?それとも…)


浩人さんが初恋の相手じゃなかったら、今この瞬間もドキドキしないだろうか。

自分の胸の高鳴りは、浩人さんへの想いか、それとも刷り込みか。

それは多分、自分で判断できない。


「どうかした?」


上の空だったのか、そう言って合わせられた視線に心臓が大きく跳ねる。

優しい瞳がじっと私を覗き込む。


「な、なんでもないです」


違う、初恋だからとかじゃない。

こんなカッコいい人にドキドキしないほうが無理だ。