「着ません」
もう一度はっきりとそう言えば、浩人さんは残念だと言うような表情のままに笑ってみせた。
「かしこまりました」
悲しい表情に絆されそうな気もするけど、だまされちゃダメだ。
ああいった服は意味もなく着たくない。
サイズ合わせのための試着は恥ずかしくて仕方なくて、フィッティングルームで緊張しかしなかった。
“とてもお似合いです”
そう笑った浩人さんの言葉は、余計に私の顔を熱くさせるだけで逆効果だ。
(うん、やっぱり絶対に着ない)
昨日の気恥ずかしさを思い出して、もう一度強く胸に誓う。
「では、本日はどういたしましょう?」
「そうですね…私の荷物の整理は終わっているんですか?」
「はい、昨日のうちに終わっております」
自分で荷ほどきをしようと思っていたけれど、この家ではやはり難しいみたいだ。
人にやってもらうことに慣れない。
(…慣れるのも困るか)
しかし、それもこの家に来たからには仕方のないことだ。
頭を切り替え、用事がなかったか考えてみる。
「そうなると…特に予定はないですね」
「左様ですか」
「はい」
頷いた私に、浩人さんが綺麗な笑顔を浮かべた。
(え、なにその言質はとったみたいな顔…)
「あ、私、勉きょ…」
「では、私とデートしましょう。勉強なら私が後でお手伝いします」
「…デート?」
「はい。デートです」
私が逃げ込もうとした勉強という名の逃げ道を塞ぎ、それはそれは楽しそうに、綺麗な顔がキラキラの笑顔を見せていた。

