浩お兄ちゃん。
心の中でそう呟くと、自然とあの頃に戻ったような気分になる。
色々と話したいことが頭に浮かんで、私は浩人さんを見上げた。
「思い出話、したいです!」
「…かしこまりました」
目尻を緩ませて笑った浩人さんの表情は、幼い私が私が好きだったもの。
「ですが、まずは朝食を。話はその後にゆっくりいたしましょう」
「はい」
忘れかけていた箱から溢れ出た思い出と、少しの混乱で思考がふわふわとしていた。
ご飯を食べてる間に落ち着かせよう。
そう思って席へ戻り、浩人さんが淹れてくれた紅茶を一口飲む。
(あれ?さっきの話の流れって……)
はた、と動きを止めた。
“浩人さんのこと好きになるかもしれませんよ?”
“浩人は元よりそのつもりだろう?”
“はい、その通りでございます”
(………え?待って。私の耳打ち、浩人さんにも聞こえてたの?)
もしかして昨日の恋人繋ぎとか腰に手を添えるとか、執事としてじゃ…ない?
(え、え…)
ティーカップを見つめたまま硬直して、頭が余計にぐるぐるとなって、ふと余計なことを思い出してしまう。
(私の初恋って、浩お兄ちゃんだった)
「真琴様?」
「な、なんですか…」
どうしよう、どうしよう。
本当に、なんで今まで忘れてたんだろう。
思い出してしまえば、熱が再発するのは早い。
「かわいらしい顔をしていないで、食べてくださいね」
ぎくしゃくと真っ直ぐに顔を見れない私に対して、浩人さんは優しい眼差しで笑う。
(私はこの先、ここで生活していけるのだろうか…)
早鐘を打つ心臓をごまかすように、並べられているフォークに手を伸ばした。

