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結局、思い出話をしながらお庭を散策をして、お祖父様との会話には触れないまま、お屋敷の中に戻ってきてしまった。
「先ほど、昨日のドレスが届いたようです」
私の部屋まで戻ってきて、扉を閉めた浩人さんが言った。
「…え、もうですか?」
昨日、お祖父様からのお申し付けで買うことになったパーティードレスは、家まで配達してくれることになっていた。
予想していたよりも早い到着には驚かされるけれど、届いたところで着るつもりはない。
「お召しになられますか?」
「遠慮します」
「そうおっしゃらずに」
にこ、と笑顔を浮かべる浩人さんに、私は苦笑いを返す。
「遠慮します…」
「私が見たいのです」
「…昨日、着ました」
「着てはいただけませんか?」
(すごい食い下がる…)
私は悪くないはずなのに胸が痛むから、イケメンがそんな残念そうな顔するのはやめてほしい。
「着ません」
もう一度はっきりとそう言えば、浩人さんは残念だと言うような表情のままに笑ってみせた。
「かしこまりました」
悲しい表情に絆されそうな気もするけど、流されたらだめだ。
ああいった服は意味もなく着たくない。
サイズ合わせのための試着は恥ずかしくて仕方なくて、フィッティングルームではひたすら緊張した。
“とてもお似合いです”
ドレスを着た私を見て満足そうに笑った浩人さんの言葉は、余計に私の顔を熱くさせるだけで逆効果だった。
(うん、やっぱり絶対に着ない)
昨日の気恥ずかしさを思い出して、もう一度強く胸に誓う。
「では、本日はどういたしましょう?予定は伺ってありませんが」
「そうですね…私の荷物の整理は終わっているんですよね?」
「はい、昨日のうちに終わっております」
自分で荷ほどきをしようと思っていたけれど、この家では誰かにやってもらう方が普通になる。
(…慣れ過ぎないように気をつけよう)
お祖父様のお屋敷に来たからには仕方のないことと頭を切り替えて、用事がなかったか考えてみる。
「そうなると…特に予定はないですね」
「左様ですか」
「はい」
頷いた私に、浩人さんはきれいな笑顔を浮かべた。
(え、なにその言質はとったみたいな顔…)
「あ、私、勉きょ…」
「では、私とデートしましょう。勉強なら私が後でお手伝いします」
「…デート?」
「はい。デートです」
私が逃げ込もうとした勉強という名の逃げ道を塞ぎ、それはそれは楽しそうに、きれいな顔がキラキラの笑顔を見せていた。

