「その…もしかしたら、浩人さんのこと好きになるかもしれませんよ?執事さんと恋に落ちるなんて、あってはならないでしょう?」
おじい様に小さな声で耳打ちをする。
耳打ちにしたのは、さすがに浩人さんの目の前で「浩人さんのことを好きになるかも」とは言えなかったからだ。
「ほう、それはめでたいなぁ」
「えっ」
「大いに結構。私が口を挟むようなことじゃないよ」
からからと笑い、おじい様はのんびりとお茶をすすった。
(ちょっと待って、予定と反応が違う)
それは困るから執事はやめよう、っていう流れになるはずなのに。
全然、めでたくなんてない。
「結構、結構。むしろ、浩人は元よりそのつもりだろう?」
おじい様は浩人さんに視線を向けて、そう言葉を投げかけた。
「はい、その通りでごさいます」
浩人さんはしっかりと私を見据え、迷いの感じられない声でそう答えた。
(…どういうこと)
「さあ真琴、朝食を済ませなさい。私は出かけるよ」
「あ、はい。いってらっしゃい…」
立ち上がったおじい様と井筒さんを見送り、しかし私は立ち尽くした。
(…待って、この状況で2人きりにしないで)

