私が内緒話をする素振りをすると、お祖父様は少しこちらに体を傾けてくれた。
「その…もしかしたら、浩人さんのこと好きになっちゃうかもしれませんよ?執事さんと恋に落ちるなんて、あってはならないでしょう?」
お祖父様に小さな声でそう耳打ちをすると、お祖父様は「ふむ」と一言こぼす。
耳打ちにしたのは、さすがに浩人さんの目の前で「浩人さんのことを好きになるかも」とは言えなかったから。
でも、お祖父様に恋バナしてるのも割と恥ずかしいのではと思い始めて、私はだんだんと顔が熱くなっていた。
「それはめでたいなぁ」
「えっ」
「大いに結構。私が口を挟むようなことじゃないよ」
からからと笑い、お祖父様はのんびりとお茶をすすった。
(ちょっと待って、予定と反応が違う)
それは困るから執事はやめよう、っていう流れになるはずなのに。
全然、めでたくなんてない。
「結構、結構。むしろ、浩人は元よりそのつもりだろう?」
おじい様は、右斜め前辺りに立っている浩人さんに視線を見て、そう言葉を投げかけた。
「はい、おっしゃる通りでごさいます」
浩人さんはお祖父様の視線を受けて頷き、私を見据えて、迷いの感じられない声でそう答えた。
(…どういうこと)
「さあ真琴、朝食を済ませなさい。私は出かけるよ」
「あ、はい。いってらっしゃい…」
席を立つお祖父様につられて私も立ち上がり、お祖父様と井筒さんを見送って、私はそのまま立ち尽くした。
(…待って、この状況で2人きりにしないで)

